所長コラム(140)「未来のスポーツのために」

皆様、こんにちは。運動研究所の宮島です。

前回は、学生のスポーツには「こういうもの」という意識が働き、なかなか変更に踏み切ることがないということを書きました。今回も引き続きこの点について書きたいと思います。

前回書いた高校野球の場合、髪型はともかくとして、暑さの問題は一歩間違えると選手や観客の命に関わる問題であり、「幸いにして」今年の大会では死者が出ていないだけとも言えるのではないかと私は思っています。同様のことは夏に行われる全国高等学校総合体育大会(いわゆる「インターハイ」)にも当てはまります。今年のインターハイは北海道での開催でしたが、熱中症で搬送される選手や応援団などが出てしまったようです。

このような状況でありながら、抜本的な解決策を講じるのではなく、「手当」程度の対応策(高校野球のクーリングタイムのようなもの)だけを行うのは、「今うまくいっているのだから、変える必要はないのではないか」「今、やり方を変えた時に“問題”が生じるくらいなら、今まで通りに行おう」という、いわば先送りともいえる考え方が根強いのではないかと想像します。学生年代の競技団体の理事は野球に限らず、学校の先生だったり当該競技経験者だったりすることが多いです。そうすると、どうしても数年間の任期中にストレスのかかる改革を行うよりは、その数年が無難に過ぎればあとは後任に任せようという意識が働くことがないとは言い切れません。特に競技によっては、メディアなどの企業が深く関与していて、それらの企業が納得してくれないと、開催時期や試合形式等が簡単に変更できない場合もあります。そのような労力を割くくらいなら、このままで行ってしまおう(自分にとっては本来業務でもないし、これで給料をもらっていないし…)となる可能性は決して低くありません。

しかし、現実として年々暑さが厳しくなっているのは事実ですし、私たちの世代と違って、現在の若い人たちは暑さに慣れる経験をしていないという指摘もあります。万が一の事態が絶対に起きないように、手遅れにならないうちに打開策を講じて欲しいと思います。

少子化の流れもあります。今でも各競技関係者の発言を見ていると、「自分たちの競技人口を増やさないといけない」という主旨の話をしている方が多くみられますが、そもそも選手の唯一の供給源である子どもの数が減少しているのですから、今までの戦略で全競技の目標が達成される訳がありません。しかし、私が今まで幾度かこのコラムでも書いたような、子どもたちを大切に育てて、いろいろな競技で活躍できるように育てようという考え方がメインストリームになっているとは言い難い状況です。高校(あるいは大学)卒業を機に競技引退をする選手が出ることは致し方ないと言えますが、その理由がケガではない状況を作り出すことは競技団体が行うべき施策であると思いますし、自分の競技では力が不十分だった子どもを切り捨てるのではなく、別の競技での活躍を期待できるような育て方をすることは、これからの指導者には求められる考え方であると私は信じています。

次回は「なぜ“これ”をするのか~主旨を考えること」について書きたいと思います。

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