所長コラム(120)「”競技人口拡大戦略”の今後」

皆様、こんにちは。運動研究所の宮島です。

さて前回は、施設、費用、興味という三点が冬の競技の普及に影響を与えていることを書きました。

そして、もう一つ難しい状況を作っているのが、各競技団体が今も続けている「競技ごとの競技人口拡大戦略」です。ここまでの少子高齢化が進んでいる日本ですが、各競技団体がそれに対応して戦略変更をしている例を、少なくとも私はまだ目にしていません。もちろん、競技団体の主要な収入源の一つが「選手の登録料」ですので、おいそれと「競技人口は少なくてもいい」とすることができないのは理解しています。ただし、競技団体に登録するような、「その競技を真剣に行う」パイは確実に小さくなっているのは紛れもない事実です。その中で、各競技団体が今まで通りの形で子どもたちの「囲い込み」を目論んだとすると、恐らく野球、サッカー、バスケットボール以外の競技は恐らく30年後には廃れてしまうだろうと考えています。私が生まれた昭和40年代は年間約200万人前後が生まれていましたが、2021年の出生数は811,602人だそうです。もう少ししたらピークの1/3になる中ですね。さらに言えば昭和の時代と比較すると、競技の選択肢は増えています。かつてはオリンピックで金メダルをいくつも獲得してメジャースポーツの名をほしいままにしていたバレーボールでも、指導者が確保できないことも相まって、チーム数の減少が止まらないそうです。

そこで私が提案したいのは、各競技団体が連携して子どもたち(特に小学生)に各競技を経験する場を提供することです。そうすることで、いくつかの競技を経験した子どもたちの選択肢を増やすことができ、また子どもたちがケガをするリスクも減らすことができると考えます。そして中学や高校に進学する頃に一つの競技を選べばいいという形にすべきだと思います。ただでさえ少ない我が国の宝物を、ケガしたからとポイ捨てすることは誰にも許されないことだと、各競技に関係するあらゆる人間が理解する必要があると思っています。

さて、今年も一年間お読みいただきありがとうございました。

次回は「パリオリンピック・パラリンピックに向けて」という点について書きたいと思います。

みなさま、よいお年をお迎えください。

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