所長コラム(124)「『チャンピオンシップ』の位置づけ」

皆様、こんにちは。運動研究所の宮島です。

前回は、NFLのスーパーボウルの凄さを書きました。では、どのようにしたら日本国内でもこのようなスポーツイベントを生み出せるでしょうか。

誤解があってはいけないのですが、今でもプロ野球の日本シリーズやかつてのサッカーJリーグのチャンピオンシップなど、注目された「一戦」がなかった訳ではありませんが、それでも昨年の日本シリーズは関東地区での視聴率は10%程度でした。昨年のサッカーワールドカップの日本戦は概ね30%程度(テレビ朝日で放送された日本対コスタリカは42.9%)でしたから、まだまだポテンシャルはあるように感じます。

第一に「その試合の結果だけではなく経過を見たい」というファン層が増える必要があります。これは一朝一夕には獲得できないので、スポーツコンテンツ側の地道な努力が必要です。ファンリレーションシップ活動をしっかりと行う必要がありますし、その競技そのものの理解が深まっていることが重要です。よくわからない競技の試合を1~2時間見続けるのはかなり難しいですよね。もちろん中には「好きな選手が出ているから」などの動機付けでご覧になる方もいらっしゃるでしょうが、それだけではスーパーボウルのようなコンテンツには育たないでしょう。かつて私も競技団体の人から「スター選手を作りたい」とか「人気漫画を描いてもらいたい」とよく言われましたが、それでは一過性の効果しか得られません。極端に言えば「ファンの日常」になるくらい、強いリレーションを築くことが重要です。

第二に「リーグ戦をどう考えるか」の整理が必要です。日本では各チームが同じ条件で競い合うリーグ戦に非常に重きを置く傾向があり、フェアなことを是とする日本の良さを表している事例でもあると思います。プロ野球でも「リーグ優勝」はペナントレースで最高勝率となったチームに与えられる称号です。クライマックスシリーズが後から追加されたために、「リーグ優勝」したチームが日本シリーズに進出しないという、一瞬「?」となる事象が発生するのはある意味で日本的と言えます。一方メディアサイド(特にテレビ)とすると「この日のこの試合で優勝チームが決まる」というのは取り上げやすかったり、盛り上げやすかったりという側面があります。アメリカではある意味でレギュラーシーズンは」「順位決定リーグ」と割り切っているようにも見受けられ、詳細は割愛しますがNFLMLBも、各チームが全て同じ相手と同条件で戦うことはしていません。これによりプレーオフの試合が「リーグの各チームの中で、今年最も強いチームを決めるためのもの」という位置づけができることになります。

第三にチームオーナーがある程度の敗戦を容認できることが挙げられます。特に国内のスポーツではスター選手がメディアで取り上げられていることもあり「その選手が勝つか負けるか」という観点で見られることが多いと思います。その結果として、チームオーナーが「自分のチームがいつも勝っていなければならない」という思考になりかねない環境にあると考えています。しかし、スポーツが面白い!と感じられるのは「どちらが勝つかわからない」時です。つまり常勝チームが一つもしくは数チームあるリーグは、見る側としてはあまり面白くないと言わざるを得ません。

日本でもアメリカンフットボールのXリーグは、かつては地区ごとに総当たりのリーグ戦をしてからプレーオフを行う形式で、正直リーグ戦序盤は大差の試合が多くて盛り上がりに欠けていましたが、最近では必ずしも総当たりの試合形式ではなくした結果、同じレベルのチームが戦う試合が増えて興味深いリーグに生まれ変わりました。伝統的なリーグ戦の形式を保つことも悪いことではないのですが、このような形でリーグ戦の価値を高めていくことも重要だと思います。

さて、次回は当初予定を変更して「東京2020大会での“収賄”と“談合”」について書きたいと思います。

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