所長コラム(94)「東京2020大会、私なりの総括④」

皆様、こんにちは。運動研究所の宮島です。

さて、今回も東京2020大会の私なりの総括をしたいと思います。
ご存じの方も多いと思いますが、東京2020大会の運営のために「公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会」という長い名前の組織が作られました。
8月1日の時点で6000名弱の職員がいて、そのうち東京都や国、自治体からの出向職員が約30%、民間企業(主としてパートナー=スポンサー企業)からの出向職員が約16%。残りの半分強が契約職員や人材派遣という直接雇用でした。
これだけいろいろな背景を持つ人たちが集まった組織委員会の中でしたが、組織として戦略を立てる中心メンバー(幹部職員)はほぼ国からの出向職員か、東京都からの出向職員でした。

普通の大会であれば、こういう出向職員というのは大会の特殊性と通常ルールとの整合性を取りつつも難しい場合には特例を作って大会運営を実現していくのですが、今回の組織委員会の場合はどうしてもそういう形にならないことも多かった印象を持ちます。
特にオリンピックの場合、他国ではパトカーの先導なども含めて選手を特別な扱いにすることが容認され、実施されることが多くあります。
しかし今回の東京オリンピック・パラリンピックで、国内をそういう雰囲気にすることができなかったことが組織委員会の最大のミスと私は考えており、その理由の一つがこの人員構成や組織構成にあると思っています。

オリンピックとパラリンピック普通のやり方で実現できるならそうする必要はありません。
しかし、一つの競技でも大掛かりな世界大会を43会場で、しかも二週間で同時に行う必要があるオリンピックとパラリンピックでは、そういう訳にはいきません。
「オリンピックとパラリンピックは特別だよな」と思っていただく努力が組織委員会には欠けていたと考えています。

組織委員会内では「責任」という言葉が飛び交っていました。
曰く「それは我々の組織の責任範疇ではない」「そこまで責任を取れないから我々では決められない」など。
その結果、本来オリンピックとパラリンピックはかくあるべきという信念のようなものが組織として持ちえず、無観客開催に象徴される重要な事柄についての判断が遅くなったのだと思います。

次回も東京2020大会の私なりの総括を書きたいと思います。

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