所長コラム(110)「スポーツの“力”」

皆様、こんにちは。運動研究所の宮島です。

さて前回は東京オリンピック開幕から一年が経過し、スポーツ界はどうなっているのか?ということを書きました。今回もこの点について書きたいと思います。

正直申し上げて、私はかなり厳しい環境に入り始めていると感じています。すなわち、一部の「強い」競技だけが繫栄して、その他の競技がよりマイナー化していく端緒になり始めているという意味です。この「強い」というのは競技力ではなく、以下の人々の生活に密着して「自分たちのスポーツ(チーム)」というポジションを獲得できているかどうか、という観点です。

まず、東京2020大会が終了してスポーツ界に流入してくる企業の資金(スポンサーマネーと言えるでしょう)が減少していると感じます。今の私の立場では正確な金額を算出することは難しいですが、日本で最も人気のあるスポーツコンテンツの一つであるJOCのパートナーシップも執筆時点で5社しか掲載されていません。開催国のマーケティングパートナーシップとして高額の契約金が求められたことに加え、東京2020大会の一年延期で相当額の増額もあって、今のパートナーシップが特殊な契約にならざるを得なかったと思いますが、私が電通で担当していた頃には高い人気を誇っていただけに、大きなパラダイムシフトが起こっていることは間違いないでしょう。

そのような環境下では、興行を行うことで入場料収入を得る力のあるNFは耐えることができますが、JOCからの補助金や企業からのスポンサードが収入の大きな柱になっている小さな国内競技団体(NF)は経営が苦しくなります。先日もある競技の日本選手権が5万人弱収容のスタジアムで行われました。席種により偏りはありましたが、平均すると2割程度しか入っていなかったように感じます。このように、日本選手権を満員の観客に見守られながら開催できる競技は実はほんの一握りなのです。そのような状況でありながら、NFで事業を推進している方にとって簡単に削減することができないのは競技大会の運営費です。コロナ禍真っただ中ならともかく、人数制限も緩和されていっている今、日本選手権を開催しないということは簡単には判断できません。そうすると収入が減った場合に削減するのは普及事業やPRイベント等になります。少子化が著しく進行しているこの国において、本当は将来の競技者やファンを創出するこのような活動こそ継続的に実施しなくてはいけないのですが、NFとしては現在の競技者を軽んじることもできないのが実情です。

さらに、有料配信のプラットフォームが欲しがるのは当然見たいと思う人が多い競技のみです。有料配信はどの競技がどれだけ見られたかが一目瞭然ですので、見られないと判断されればドライに契約を打ち切られます。NFやリーグはこの状況をしっかりと把握して、ファンリレーションシップに継続的に取り組まなければならないのです。もちろんそのことに早くから取り組んできている競技やチームも存在していますし、そのような競技やチームは確実に存在感を増していると感じています。

次回は「夏の競技大会をどう考えるか」について書きたいと思います。

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