所長コラム(104)「小学生に全国大会は必要か」

皆様、こんにちは。運動研究所の宮島です。

さて前回は柔道の小学生全国大会の廃止について、特に朝日新聞デジタルの記事を紹介しました。

私自身の考えを申し上げれば、小学生の全国大会そのものはあってもいいと思っています。

しかし、その存在があることによって、指導者や親から過度なプレッシャーが子どもにかけられたり、あるいは審判の判定に対する罵声などにつながったりするのであれば、廃止してしまった方がよいと考えています。

小学生年代は成長の速度がそれぞれ大きく違います。その年代で過度な練習を強いてしまった場合、子どもの体に甚大な影響を及ぼしてしまう可能性があります。そのことを親や関係者が十分に考慮できるかどうか、がポイントだと思います。

前回もご紹介した「judo3.0スクール」の記事を読んでいても、競技性=全国一番を目指すことと考えてしまう方が少なくないことが読み取れます。

私がかつて出向していた(公財)日本バレーボール協会でも「小学生の全国大会を廃止しては?」という提案を行った際に帰ってきた言葉も大概は「全国大会をなくすと子どもたちのモチベーションをどうやって保てばいいのか」という点と「全日本バレーボールチームの競技力が落ちる」という2点でした。

一方でこのコラムではよく書いていますが、日本は大変なスピードで少子高齢化が進んでおり、人口減少が止まる気配はありません。

その中で各国内競技団体は高度成長期とほとんど変わらない競技普及戦略を取っているように感じます。

それは「すそ野は広く、頂点は高く」、つまり若年層の競技人口を広げることによって代表クラスの競技力が向上するというものです。じつはこの考え方はその競技においては競技力に乏しい子どもが淘汰される形に他なりません。

これから10年後、20年後の競技力を支える子どもたちが減少している中で、同じことをやっていても無理が生じます。その意味において、私は柔道の決定を英断と思っていますし、他競技がぜひ追随していただきたいと思います。

次回は「米国は巨額の放送権料をなぜ支払えるのか」を書きたいと思います。

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