所長コラム(101)「北京オリンピックでの『問題』①

皆様、こんにちは。運動研究所の宮島です。

先月北京オリンピックが閉幕しました。

日本選手団の活躍も目覚ましく、連日メディアではその結果が報道されていましたね。

私はかつて広告代理店でJOCマーケティングを担当していた時にカーリングの藤澤選手とお会いする機会がありましたので、今回は特に強い思い入れをもって応援していました。ですから、今回の結果には感慨もひとしおであります。

さて、一方で北京オリンピックでは世間を揺るがすような事象が2つ生じました。

「ROC選手のドーピング」と「スキージャンプ混合団体での失格」です。今回と次回はそれらについて書きたいと思います。

まずはROCの女子フィギュアスケート選手(以下「V選手」と表記します)によるドーピングについてです。

何が起こったかについては報道もされていますので詳細は省略いたしますが、私としてはCASの出場を認めるという裁定そのものには理解を示したいと考えています。

もちろん本来は、昨年12月下旬のロシア選手権で採取されたV選手の検体の分析と、陽性結果に伴うその後のプロセスをオリンピック前に完了していることが望ましいのですが、何らかの理由(これもロシア側とWADA側の意見が食い違っているようですね)によってそれが間に合わなかったため、16歳未満の保護対象者の出場機会を「疑惑で奪う」訳にはいかないという配慮だったと思います。

このこと自体は、現地に既に入って演技も行った後であることを考慮すれば受容できる範囲だと思います。

報道によれば、V選手はこの後正式な裁定を受けることになるとのことです。

今回検出されたトリメタジジンという薬物は、通常であれば即刻資格停止になるような物質とのことですから、最終的にはV選手が身の潔白を証明して正式な資格停止処分を免れることはかなり難しいことだと思います。

海外の放送局の中ではV選手の演技中に実況や解説を一切しない形で抗議の意を表したところもあったようですが、私は粛々と放送を行った日本の対応が個人的にはしっくりします。

今回の問題は単純なV選手のドーピング問題にとどまらず、

・そもそもロシアという国が組織的なドーピングを行ったとして国としての参加を禁止されている状態であること

・前述の通り、本来は早期に行うべきプロトコールが実施されなかったこと

・V選手のコーチが非常に厳しい指導や管理を行う人であること

・かつてドーピングを指導したとして資格停止になった医師がROCフィギュアチームのドクターをしていること

が問題を複雑にしています。

特に2番目が原因で、本来であればロシア選手権でオリンピックへの参加資格を得て、繰り上げで参加できた(であろう)選手が参加することができなかったことになりますが、オリンピック期間中にそのことをほじくり返し始めたら収集がつかなかったでしょう。

実際に競技の進行を司る立場の人間であれば、このようなイレギュラーなことは一旦後回しにしておいて、他のエラーにつながることを避けたいと考えることは理解できます。

V選手の母親の主張などを見るに、完全に真相が究明されることは残念ながら恐らくないと思われますが、ロシアに限らず、スポーツにおけるドーピングが根絶されるためにどうすべきか、より厳しい対応も考えなければいけないと思わざるを得ません。

次回はもう一つの問題である「スキージャンプ混合団体での失格」を書きたいと思います。

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