所長コラム(76)「競技そのものへの興味」

皆様、こんにちは。運動研究所の宮島です。

冒頭に、先日の公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の森喜朗会長の発言について触れたいと思います。
私は、当該発言は組織委員会の会長が日本オリンピック委員会(JOC)の臨時評議員会で行った発言としては極めて不適切だと考えます。
このコラムを執筆している最中に森会長の辞任意向のニュース速報が流れましたが、残念ながら似たようなことが再び起こってもおかしくないのが今の日本のスポーツ界だと思います。

現在のスポーツ界は国からの補助金なしではほとんどの競技団体(NF)の活動は成り立たない状況ですので、スポーツ界と政治とのつながりは簡単にはなくならないでしょう。
NFの会長や理事には多くの政治家が名を連ねていますし、その多くは年齢を重ねた男性です。
(女性がゼロではありません。小池百合子東京都知事もかつて日本ウエイトリフティング協会の会長でした)
1980年のモスクワオリンピックのボイコット以来「政治とスポーツの関係」問題は長く議論されてきていますが、特に我が国ではまだ非常に近い関係にあると言わざるを得ません。

競技に関係のない政治家(経験者であることはあります)をNFが招くということはメリットがあるからですが、時代背景も含めてこの年代の男性には森会長と類似の考えを持っている人が少なくはありません。
また、メリットをもたらしてくれる政治家の考え方が極めて古いものであったとしても、その人を外してしまうとメリットがなくなってしまうので、それが出た瞬間に笑いで済まそうとしてしまったのが、同じ時代を生きてきたJOCの評議員たちだったのだと想像します。
スポーツ界だけではなくこのような発言がなされない日本になることが重要なのだなと気づかされた一件でありました。

スポーツ界の経済的自立など、スポーツ側で行わなければならないことはたくさん残されていますが、微力ながら運動研究所もお手伝いできればと思っています。

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さて前回は、「なぜNFLはファンを引き付ける努力を惜しまないのか」ということを書きました。
ちなみに、日本時間の先週月曜日に、NFLのチャンピオンを決める試合「スーパーボウル」も行われました。
大ベテランQBのトム・ブレイディ率いるタンパベイ・バッカニアーズが、若き指令塔パトリック・マホームズ擁するカンザスシティ・チーフスに勝利した、素晴らしいゲームでした。
このゲームについても書きたいことが満載なのですが…

さて本題ですが、NFLに限らずアメリカのメジャースポーツは常にその競技やリーグへの興味を持たせ続けることの重要性を理解しています。
それによって選手が入れ替わったとしても、リーグやチームへの興味は尽きず、世代を超えて親から子へ、そして孫へと観戦する文化が続いていきます。

翻って日本の各リーグ戦を私なりに見ていると、野球、サッカーは競技そのものへの理解がかなり深まっていると思いますが、それ以外の競技ではまだまだスターに頼ったマーケティングをしているように感じています。
そのため、限られたスター選手が勝つか負けるかだけが報道されてしまう傾向も強く、その選手が引退することで、その競技の人気が低迷するケースが多くみられます。

アメリカでは150万人がアメリカンフットボールの競技者であると言われます(日本は2~3万人程度)。
ということは、アメリカンフットボールのことをよく理解している人がそれだけいるということです。
さらに、アメリカではよく言われるようにシーズンスポーツの考え方が定着していて、一人がいくつかの競技を経験することが多いです。
当然、各競技に関する理解が深まっていますし、お互いに説明しあう機会も増えていくでしょう。
日本は一つの競技を突き詰めることが多いので、自身がやっていた競技はよくわかるけど、他の競技はよくわからない…という声を耳にします。
ここに日本のスポーツの発展のカギがあるように感じています。
具体的にはまた別の機会でご報告できればと思っております。

次回は改めて「新型コロナウィルス感染症とスポーツ観戦」について書きたいと思います。

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