所長コラム(96)「東京2020大会、私なりの総括⑥」

皆様、こんにちは。運動研究所の宮島です。
さて今回も、前回に引き続いて東京2020大会の新型コロナウィルス感染症対策について書きたいと思います。

前回は「判断が間際過ぎて会場の負担が生じたこと」と「出身国が違うことから基本的対応の徹底が難しかったこと」を書きました。
特に2点目についてですが、東京2020大会への各参加者(ステークホルダーと呼ばれていました)の総数は大きく削減されたとはいえ、やはり数万人が各会場等へ来場しました。

組織委員会では報道もされた「プレーブック」というものをステークホルダーごとにまとめ、何度も説明会を実施していました。
このプレーブックでは、各ステークホルダーが日本に向けて時刻を出発する時から日本滞在中、そして帰国する時までの振る舞い方を定めたもので、例えばよく耳にした「アスリートは毎日PCR検査を行う」などはこのプレーブックで定められた内容です。
そして、このプレーブックには各省庁などの思惑がふんだんに盛り込まれたようで、その結果プレーブックに記載された内容のボリュームが多すぎたと感じています。
特にアスリートはパフォーマンスへの影響を考慮し、できれば各自のやり方を変えたがらない人たちですので、方法論よりも主旨をしっかりと理解してもらうことが重要だったのではないかと今は感じます。
主旨がしっかりと理解されていれば、アスリートが東京タワーに行ってしまうことも防げたのではないかと考えてしまいます。
しかし、組織委員会の中心メンバーは国や都からの出向者ですから、各省庁や政権の意向に反することは難しかったのでしょう。
「相手に聞かせたいこと(理解させたいこと)」ではなく「こちらが言いたいこと(話をした実績を残したいこと)」を発信した結果、このような形になったことは残念でなりません。

また、無観客開催が間際の判断になったため、新型コロナウィルス感染症対策用の物品の第一次発注タイミングに間に合いませんでした。
その後の追加発注の量を調整することで多くの余剰を出さずに済ませるよう努力しましたが、こういうところでも決断は早めにした方がいいのだなと感じたものでした。

次回も東京2020大会の私なりの総括を書きたいと思います。
今年も所長コラムをお読みいただきありがとうございました。みなさまよいお年をお迎えください。

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